広げるのは親切 ウイルスではなく

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新型コロナウイルスの感染拡大が続く世の中では、スーパーで買い占めや食料品をめぐる小競り合いが起きるなど、暗い話題が少なくない。だが、大勢の心を動かす、親切心あふれる行動もみられる。
生活に欠かせない衛生用品を、貧しい人に提供している英慈善団体ビューティー・バンクスは15日、新型ウイルスの流行を受けた緊急募金を開始した。
「昨日の午後以降だけで6万ポンド(約780万円)が集まった。必需品を備蓄するお金がない人のために、これでせっけんや手の除菌用ローション、洗濯用の粉せっけんを買うことができる」と、同団体を2年前に共同設立したコラムニストのサリ・ヒューズさんは話した。
必要なものを手に入れられない状態とはどういうことか――。新型ウイルスの感染拡大で、多くの人がは自分の問題として実感して、考えられるようになっていると、ヒューズさんは言う。
「店の棚を眺めて、必要なものがない、買えないと実感する。その状態を多くの人が、今回初めて経験している。そういう思いをしょっちゅうしている生活困窮者の身になって考えることができる」
「危機に置かれたとき、前向きな行動をとれば、気分を静め、落ち着かせることができる。私は確実にそうだ」
「人に何かをあげると、自分の気分がよくなる。自分が何かをしている、大きな取り組みに参加していると思えるので」


英グレーター・マンチェスターのオルトリンガムでは、レイチェル・プレザントさんが、高齢者や社会的弱者、近くに家族も友人もなく自宅にこもってしまう地域住民を支援するボランティアを募集している。彼女と友人2人は14日、フェイスブックで呼びかけを始めた。
「あっという間に2000人が応募してきて、手伝いたいというメッセージも3500件に上った。すごいことだ」
ボランティアは地域が割り振られ、住民を訪ね、雑用を引き受けたり買い物をしたりする予定だ。
「パニックしても、何も解決しないと思った。そのエネルギーの一部を、地域の人々の支援に使ったらいいんじゃないかと思った」
フェイスブックによると、新型ウイルスの流行を受けて設立された地域の支援グループはイギリスで300を超え、20万人超がメンバーになっているという。
新型ウイルスの検査で陽性とわかり、英ノース・マンチェスター総合病院で13日に亡くなったダレル・ブラックリーさん(88)の遺族は、故人をしのぶ方法として、まわりに親切をするよう呼びかけた。
遺族の代理として教会関係者が書いたフェイスブックの投稿には、「花やカードはご遠慮します」と書かれている。

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「その代わりに、親切な行動をしてもらいたい。独りぼっちの人、いま苦労している人、買い物や子どもの面倒、話し相手を必要としている人を助けてほしい」
「自分がしたり、受けたりしたちょっとした親切な行為を書き込んで、分かち合おう。ダレルの思い出として美しいものをつくろう」

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ロンドン南部に住むアリ・カリーさんは、娘のスカーレットさん(10)とグレイスさん(12)が手書きの手紙を書き、自宅前の通りに沿う家々の郵便受けに入れて回ったと話した。
「2人ともやさしい女の子なんです」とカリーさんは言う。
姉妹が、「こんにちは。この大変なときにもし自主隔離しなくてはならなくなったら、どうか私たちに電話かメッセージしてください。買い物その他をお手伝いできますから。お大事に」と書いて配ったところ、これまで2、3通の手書きの返事が届いた。隣に住む高齢者は、「いつか助けが必要になるかもしれない」と言っていたという。

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自分も独自にはがきキャンペーンを始めたベッキー・ワスさんは、近所の人に目を配ろうと呼びかけた。自分のがはがきの内容がソーシャルメディアで広く拡散されたことについて、「親切心がこんなに素早く、遠くまで広がったのは、すばらしい」と語った。
ワスさんが用意したはがきは、近所の人に自分の名前と電話番号を知らせ、買い物の手伝いや、緊急物資の調達、電話での会話などを必要としていないか尋ねるもの。自宅で印刷できるようにしてある。
英コーンウォールのファルマスに住むワスさんは、「反応は信じられないほどすごい」、「近所の人たちとつながったという、心温まる話が世界中から届いている」と話した。

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思いやりのある行動を取っているのは個人だけではない。
英カウンティ・ダウンのポータフェリーにあるホテルは、スーパーやレストランまで行けない高齢者に、夕食を無料で配達すると発表した。
「まったく前例のない事態を前に、この地域は住民が密接な関係を築いている。団結して一緒に克服しましょう」と、このホテルはフェイスブックで呼びかけた。
英パドストウの食料雑貨店は、毎日30分間を、1950年以前に生まれた買い物客の専用時間帯にしている。
この店の経営者は、新型ウイルスとの戦いが続く中で、高齢の客に「わずかでも平穏な気持ち」になってほしいと話した。
英グラスゴーのサウスサイドにあるカフェは、高齢者や基礎疾患のある人にスープを届けている。ステンハウスミュアーにある商店は、地域の年金生活者に手の除菌ジェルを配っている。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、親切な行動が広がっていることへの感謝をたびたび表明している。
15日には、スペイン・セビリアのアパートで隔離中の住民のために「レッスン」を開いた、フィットネス・インストラクターの動画をツイッターに投稿した。アパートの住民たちはそれぞれのバルコニーで、インストラクターに合わせて体を動かしている。
テドロス事務局長は、「人々が世界中で見せている親切心と思いやりの全ての事例に感銘し、奮い立つ思いだ」、「この精神があれば、コロナウイルスを打ち負かせる」とツイートした。










