イスラエル、ガザに残っていた最後の人質の遺体収容と発表

ダン・ジョンソン(エルサレム)、ラフィ・バーグ

イスラエル軍は26日、パレスチナ・ガザ地区に残されていた最後の人質、ラン・グヴィリ氏(24)の遺体を収容したと発表した。これにより、アメリカのドナルド・トランプ大統領が推進するガザ和平計画の次の段階へ進む道が開かれることとなった。

イスラム組織ハマスとイスラエルは昨年10月、和平計画の第1段階に合意。戦闘を停止し、イスラエルからガザに連れ去られた人質とイスラエルにいるパレスチナ人囚人をそれぞれ引き渡したほか、イスラエル軍が部分撤退し、ガザへの人道援助の搬入量を増やした。しかし、グヴィリ氏の遺体引き渡しは実現せず、イスラエルは行方を探していた。

イスラエル軍は25日朝、ガザの埋葬地で捜索を開始していた。ハマスの軍事部門は、グヴィリ氏の所在に関する「すべての詳細と情報」を仲介者に提供したとしている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、グヴィリ氏の帰還を「並外れた成果」と評価した。

「我々は、そして私は約束した。全員を連れ戻すと。そして実際に全員を、最後の捕虜を含めて全員を連れ戻した」

イスラエル首相官邸は、グヴィリ氏の捜索・帰還作戦が終わり次第、ガザとエジプトの境界にある主要な検問所を再開するつもりだとしている。

イスラエル軍は先週末にかけて、グヴィリ氏の所在に関する既存の情報を精査した結果、ガザ市近郊の埋葬地の捜索に至ったという。軍関係者の一人は、この埋葬地が、ガザでのイスラエル軍の撤退ライン「イエローライン」の域内にあったと説明した。イスラエル軍は停戦合意に基づき、「イエローライン」までの領域を管理している。

ハマスは、同組織が「必要な情報を仲介者に随時提供し続けた結果、遺体の収容に至った」と述べた。

ハマスの広報担当のハゼム・カッセム氏は、グヴィリ氏の遺体発見は、「ハマスが停戦合意のすべての要件に取り組んでいることを裏付ける」ものだと述べた。

イスラエルでは、グヴィリ氏の父イツィク氏が息子の棺の前で別れを告げた。

「家にとどまる選択肢もあったのに、おまえは私に言った。『父さん、友達だけに戦わせるわけにいかない』と」と、感極まった様子で述べた。

「おまえは戻ってきた。ここ(イスラエル)で自分に与えられた栄誉を、おまえを連れ戻したすべての人を見てほしい。警察の全員が、軍の全員がここに集まって、おまえと共にいる。国中がおまえと共にいる。息子よ、おまえを誇りに思う」

グヴィリ氏の妹シラ氏は先に、イスラエル人の人質家族でつくる「人質・行方不明者家族フォーラム」に対し、「とてつもなく安堵している。ほっとしているが、悲しい。こんなかたちで終わってしまったことがすごく悲しい。でも、いつかは終わらせなければならないことだった。兄が家に帰ってきて本当にうれしい」と語った。

グヴィリ氏の遺体収容は、遺族にとって区切りとなるとともに、人質をめぐる843日間におよぶイスラエルの苦悩に終止符を打つこととなる。

また、ガザ停戦合意の第2段階へ進む道も開かれる。イスラエルはかねてから、最後の人質であるグヴィリ氏を見つけ、帰還させるまで、次の段階へ進むのを拒んでいた。

第2段階では、ガザの再建と完全な非武装化が進められるとされる。非武装化には、ハマスや、パレスチナのほかの勢力の武装解除が含まれる。また、国際安定化部隊(ISF)のガザ派遣や、イスラエル軍の段階的撤退も予定されている。ISFはまだ構成されていない。

グヴィリ氏の遺族は23日、テルアヴィヴの「人質広場」に集まった。2023年10月7日にグヴィリ氏と250人がガザに連れ去られて以来、一家は毎週のようにここに足を運んできた。

ネタニヤフ氏は26日、「私は遺族の目を見てこう言った。『我々はランを連れ戻す』と」、「私はあなた方、イスラエル市民に、全員連れ戻すと約束した」と述べた。

この約束はついに果たされた。そのことは称賛されるだろう。しかし一方で、全員を帰還させるまでにあまりに時間がかかり、イスラエルとパレスチナの双方であまりに多くの犠牲者が出たと、批判する声もある。

イスラエル国防軍(IDF)は声明で、「我々にもたらされた情報と諜報によると、ヤマム特殊部隊戦闘員のラン・グヴィリ軍曹(死亡時24歳)は、2023年10月7日午前、戦闘で死亡し、遺体がガザ地区へ持ち出された」とした。

「IDFは遺族の悲しみに寄り添い、今後も遺族や解放された人質を支援し、イスラエル市民の安全の強化に向けた行動を継続していく」

IDFは、「これをもって、ガザ地区から人質全員が帰還したことになる」とした。

ネタニヤフ氏は、人質の解放とハマス打倒のため、ガザに兵士を派遣したと述べた。

ガザ南部とエジプトを結ぶラファ検問所の再開は、重要な次の段階といえる。しかしこれ以外にも、対応しなければならない難しい課題は残されている。

例えば、ハマスをどのように武装解除し、ガザの社会構造から排除するのだろうか。イスラエル軍の撤退時期は? ガザの将来の安全を担う国際部隊は誰が構成するのか?

ガザでは2014年以降、イスラエル人の人質が、生死にかかわらず拘束されてきた。グヴィリ氏の帰還によって、同地区のイスラエル人拘束者は12年ぶりにゼロになった。この事実は、ガザをめぐる紛争が根深いもので、永続的な平和の構築がいかに困難であるかを改めて思い起こさせるものだ。

トランプ米大統領は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「ガザで最後の人質の遺体が収容された。これで生存する人質20人と死者全員を取り戻した! 素晴らしい仕事だ!」と投稿。

また、「ほとんどの人は不可能だと思っていた」ことだとし、自分が率いる「偉大なチャンピオン・チーム」を称賛した。

アメリカ提案のガザ和平計画の第1段階では、ハマスは停戦開始から72時間以内に、イスラエル人の人質を生死を問わず全員イスラエルに帰還させることが求められていた。実際には、引き渡しが大幅に遅れたものの、生存するイスラエル人人質20人、死亡したイスラエル人と外国人人質27人の遺体が引き渡され、グヴィリ氏が最後の1人となっていた。

24歳だったイスラエル人警官グヴィリ氏は、2023年10月7日のハマスによるイスラエル南部襲撃でガザに連れ去られた251人のうちの1人。この攻撃ではイスラエルで約1200人が殺害された。

その後の2年間で、イスラエルがパレスチナ人囚人250人とガザで拘束した1718人を引き渡す見返りとして、大半の人質は生きて解放された。

ハマスの攻撃を受けてイスラエルがガザで開始した軍事作戦では、これまでに7万1660人のパレスチナ人が殺害されたと、ハマス運営のガザ保健省は発表している。