米移民当局職員に男性が撃たれ死亡、1カ月で2人目の犠牲に抗議拡大 ミネソタ州

米ミネソタ州ミネアポリスで24日、米移民当局の職員がアメリカ人男性(37)に向けて発砲し、男性が死亡した。移民の取り締まりの最中に米市民が当局に射殺されるのは1カ月で2人目で、抗議と非難が拡大している。

死亡したのは、集中治療を専門とする看護師のアレックス・プレティ氏。24日の当局との衝突で、銃撃された。ミネアポリスでは凍えるような寒さの中、数百人が街頭に繰り出して抗議した。

24日の衝突を捉えた複数動画には、連邦当局者とプレティ氏がもみ合う様子が映っている。発砲に至るまでの経緯について、連邦当局と州当局の主張は食い違っている。

ドナルド・トランプ大統領は昨年12月、民主党員が首長を務めるミネソタ州に連邦捜査官を派遣し、不法移民の大規模な強制送還を実施すると約束した。

プレティ氏が撃たれた現場近くには24日夜、数百人が集まり、ろうそくを灯してプレティ氏を追悼した。

今回の事件を受け、数百人規模の抗議者はこの日、米移民税関捜査局(ICE)による発砲や強制捜査に対する怒りをあらわにした。武装した覆面の捜査官は催涙ガスや閃光(せんこう)弾を使って応戦した。

こうした抗議行動は、ニューヨークやシカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコなどほかの都市にも広がり、「アレックスに正義を」、「ICEを廃止しろ」と書かれたプラカードが掲げられた。

「国内テロリスト」と政府主張、「持っていたのは携帯電話」と遺族たち

トランプ政権は、プレティ氏は「国内テロリスト」だとしている。

クリスティ・ノーム国土安全保障長官は、プレティ氏が「暴力行為を長引かせるために」現場にいて、9ミリ口径の拳銃を持って連邦捜査官に近づいたと主張した。

現場をとらえた複数動画には、発砲前に、国境警備当局の職員とプレティ氏がもみ合う様子が映っている。

国土安全保障省(DHS)は、拳銃を取り上げようとした当局にプレティ氏が抵抗したため、正当防衛のために発砲したと説明した。

複数の目撃者や地元当局、遺族は、プレティ氏が手にしていたのは武器ではなく携帯電話だったとして、政府の説明に異議を唱えている。プレティ氏の両親は、現場で起きたことについて政府が「吐き気を覚えるほどのうそ」を流布していると非難した。

BBCヴェリファイは、発砲直前の様子をとらえた複数の動画を分析した。これらの動画では、プレティ氏が携帯電話で当局者を撮影しているのが確認できる。当局者の1人が別の人物を押し倒すと、プレティ氏はその人と当局者の間に立ちはだかった。

すると当局者は、地面に倒れた女性を助けようとしていたプレティ氏の顔に催涙スプレーを噴射。複数の当局者が加わり、プレティ氏を地面に押さえつけた。動画には、プレティ氏が銃を持つ姿は映っていない。

プレティ氏の腰のあたりから何かを取り出そうと手を伸ばした当局者が、何も持っていないことが動画で確認できる。その後、プレティ氏に背を向けたこの当局者の右手には、拳銃のようなものが握られていた。

それから1秒もしないうちに、当局はプレティ氏を撃った。10発の発砲音が聞こえた。

2人の目撃者は、プレティ氏は武器を振りかざしてはいなかったと証言している。

しかし、トッド・ブランチ司法副長官は25日、米NBC番組「ミート・ザ・プレス」で、動画が不明瞭で「見えない部分が多く」と主張。捜査の実施が重要だと述べた。

トランプ大統領は、地元当局と州当局が「反乱を扇動」しており、銃撃現場で連邦移民当局の職員を守るための地元警察の派遣を取りやめたと示唆した。

しかし、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事は、連邦政府の主張に強く反論した。「複数の角度から映像を確認したが、吐き気がするほどの内容だ」と記者団に語った。

「映像が残っていることに感謝だ。DHSの説明では、7人の勇敢な男たちが大集団の猛攻を受けたかのように語られているが、これがまったくのナンセンスでうそだということが、動画で分かるからだ」

ウォルズ州知事は、ミネソタ州でのICEの活動を停止するようトランプ氏に改めて求めるとともに、抗議者には平和的に行動するよう呼びかけた。

ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長も、ICE職員のミネソタ州からの退去を求めた。「この作戦を終わらせるために、あと何人の住民が、あと何人のアメリカ人が死んだり、ひどいけがを負ったりしなければならないのだろうか」と、フレイ市長は述べた。

合法的に銃を所有、前科はなく

ミネアポリス警察のブライアン・オハラ本部長は、プレティ氏には交通違反以外に犯罪歴はなく、合法的に銃を所有していたと説明した。

ミネソタ州では許可証があれば、公共の場で拳銃を携帯することが認められている。

共和党のビル・キャシディ上院議員は、ミネアポリスでの出来事は「非常に憂慮すべき」事態だと述べた。また、ICEとDHSの「信頼性」が危機に瀕していると、ソーシャルメディアに投稿した。

「連邦レベルと州レベルによる、全面的な合同調査が行われなくてはならない」

今回の銃撃事件は、ミネソタ州当局と連邦職員、そして連邦職員による移民の取り締まりを監視するために街頭に繰り出した抗議者との間で、数週間にわたり緊張状態が続く中で起きた。

ミネアポリスでは今月7日にも、ICE職員がルネー・グッド氏(37)を射殺している。グッド氏は当時、当局の活動を監視する活動に加わっていたとされる。

トランプ政権は昨年12月、ミネアポリスでの移民取り締まりを強化した。これは、ソマリア系移民の一部が、連邦政府からの新型コロナウイルス補助金の配分をめぐる大規模な詐欺で有罪判決を受けたことがきっかけ。ミネソタ州にはアメリカ最大のソマリア系コミュニティがある。

ICE職員には、不法滞在が疑われる人物を拘束・逮捕する権限がある。