You’re viewing a text-only version of this website that uses less data. View the main version of the website including all images and videos.
金価格が初めて5000ドル突破、金融と地政学リスクへの懸念で需要増
ピーター・ホスキンス記者、アダム・ハンコック・ビジネス記者
金価格はアジア時間26日の取引で、1オンス当たり5000ドル(約77万円)を初めて上回った。貴金属価格は昨年60%以上、急騰しており、歴史的な上昇基調が続いている。
こうした動きの背景には、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)同盟国の間で、デンマーク自治領グリーンランドをめぐる緊張が高まり、金融と地政学リスクの両面で不確実性に対する懸念が強まっていることがある。
アメリカのドナルド・トランプ大統領の通商政策も、市場を不安にさせている。トランプ氏は24日、カナダが中国と貿易協定を結んだ場合、カナダに100%の関税を課すと警告した。
金やその他の貴金属は、不確実な時期に投資家が買う「安全資産」とされている。銀価格も昨年に約150%上がったが、今月24日に初めて1オンス当たり100ドルを突破した。
貴金属の需要は、通常より高いインフレ率、米ドルの弱さ、各国中央銀行による買い入れ、さらにアメリカの中銀に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が今年再び利下げすると予想されていることなど、幅広い要因によって押し上げられている。
また、ウクライナやパレスチナ・ガザ地区での戦争に加え、米政府がヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束したことも、金価格を押し上げる一因となっている。
金の最大の魅力の一つは、その相対的な希少性だ。業界団体「ワールド・ゴールド・カウンシル」によると、これまでに採掘された金はおよそ21万6265トンにとどまっている。
これは、オリンピックサイズのプール3〜4杯を満たす程度。採掘技術の進歩や新たな鉱床の発見により、その大半は1950年以降に地中から取り出されたものだ。
米地質調査所(USGS)は、さらに6万4000トンの金が地下埋蔵量として採掘可能だと推定しているが、金の供給量は今後数年で頭打ちになると予測されている。
貴金属の精練・鋳造大手ABCリファイナリーの機関投資家向け市場部門を率いるニコラス・フラッペル氏は「金を保有すると、債券のように誰かの負債に結びつくわけでもなく、株式のように企業業績によって価値が左右されるわけでもない」と説明。
「非常に不確実な世界において、金は優れた資産の分散手段だ」と付け加えた。
みんなが金を求めている
2025年に投資家が貴金属に殺到したことで、金は1979年以来最大の年間上昇幅を示した。
トランプ氏の関税や、人工知能(AI)関連株が過大評価されているとの懸念などで金融市場が動揺する中、金は繰り返し最高値を更新した。
「その大部分は、アメリカの政策をめぐる極度の不確実性によるものだと思う」と、調査会社メタルズ・フォーカスのニコス・カヴリス氏は述べた。
経済面の懸念のほか、投資家が利下げを予想すると金価格が上昇する傾向もある。
利下げは通常、債券などの投資収益を縮小させるため、投資家は金や銀といった資産に向かう。
FRBは今年、主要金利を2回引き下げると広く予想されている。
「金利が下がると、(政府債などに)資金を置いておく機会費用がもはや見合わなくなるため、人々は金に向かう」と、豪ペッパーストーンの調査・分析員アフマド・アシリ氏は述べた。
金を買い増しているのは投資家だけではない。
ワールド・ゴールド・カウンシルによれば、各国の中央銀行は昨年、数百トン規模の金塊を準備資産に追加した。
「米ドルからの非常に明確なシフトが進んでおり、それが金に大きく利益をもたらしている」と、前出のカヴァリス氏は述べた。
今年に入っても金価格は上がり続けているが、フラッペル氏は、この「ニュース主導」の市場では、価格が下落する可能性もあると警告する。
「世界にとっては望ましいが、金にとっては必ずしも好ましくない予想外のニュースが出る余地は常にある」と、同氏は述べた。
ただ、すべての人が純粋な投資目的で金を購入しているわけではない。
多くの文化圏では、金は祭礼の際に購入され、結婚式などの祝い事で贈り物として用いられてきた。
インドでは、ヒンドゥー教の祭り「ディワリ」が、富や幸運を呼び込むために貴金属を購入するのに良い時期とされている。
米モルガン・スタンレーによれば、インドの家庭が保有する金は3.8兆ドル相当と、同国の国内総生産(GDP)の88.8%に相当する。
世界最大の金の単一消費市場である中国でも、金の購入が幸運をもたらすと広く信じられている。
カヴァリス氏は、2月に始まる陰暦の午(うま)年に言及し、「中国の春節前後に金需要が高まることが多く、現在もある程度、その動きを確認している」と述べた。