現金の利用、イギリスで復活の動き 生活費の高騰で
ノア・ナンジ、アンジェラ・ヘンシャル、ビジネス担当記者、BBCニュース

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イギリスで生活費が高騰するなか、支出を厳しく管理しようと、多くの人が現金の利用を復活させている――。英ポスト・オフィスの新たな調査で、そんな状況が浮かび上がった。
イギリスでは7月、郵便局で個人が引き出した現金の月別の総額が8億100万ポンド(約1310億円)に上った。
5年前に記録を取り始めて以降の最高額で、1年前と比べて20%以上アップした。
政府の「現金へのアクセス」独立検討委員会の委員長を務める、キャッシュ・アクション・グループのナタリー・シーニー会長は、人々が物価上昇に対処するために「文字通り小銭を数えている」ことが表れていると述べた。
「間違いなく生活費の危機が理由だ」
「人々は現金を引き出し、ポットの中に入れ、『これが請求書の支払い、これが食費、そしてこれが残り』などと言うようになるだろう」
ステイケーションの影響も
イギリスでは現在、物価がこの40年間で最も急に上昇している。
生活費の上昇に収入が追いつかず、人々は家計を圧迫されている。
そうしたなか、国内の郵便局が窓口で扱った現金の預け入れと引き出しの合計は、7月は33億2000万ポンド(約5400億円)となり、前月より1億ポンド増えた。
うち、個人による現金の引き出し額は8億100万ポンドで、前月比では約8%、前年同月比だと20%以上アップした。
個人の現金引き出し額が8億ポンドを超えたのは、これを含めてまだ2回しかない。前回は2021年12月だったが、郵便局の窓口業務などを行っている英企業ポスト・オフィスによると、年末は引き出しが増加するのが常だという。
同社はまた、全国の郵便局1万1500店で引き出しが増えたのは、1週間単位や1日単位で予算を管理するのに、現金を利用する人が増えたためだとした。
さらに、休暇を自宅や近場で過ごす「ステイケーション」を実践する人が増えたことも、現金の取り扱いが増している一因だと分析した。同社の最近の調査では、休暇を国内で過ごす予定のイギリス人の71%が、出発前に現金を引き出そうと考えていることが浮かび上がった。
預け入れも増加
ポスト・オフィスの銀行業務担当ディレクター、マーティン・キアーズリー氏は、「信頼できる予算管理の方法として、ますます多くの人が現金に頼るようになっている」
同社の調査によると、現金の預け入れも増えている。
個人の現金預け入れは、7月が13億5000万ポンドで、前月より2%増えた。企業の現金預け入れも、7月は11億3000万ポンドとなり、前月比1.9%増となった。
キアーズリー氏は、イギリスが「キャッシュレス社会では到底ない」ことがわかるデータだと述べた。
小銭を数えて倹約
前出のシーニー氏は、生活費の上昇を考えれば、現金の利用が増えているのは容易に理解できるとBBCに話した。
「現金は10年以上前から利用が減っていて、(新型コロナウイルスの)パンデミックがそれを加速させた。ここに来て増加に転じているが、それは間違いなく生活費の危機が理由だ」
「現金を使えば、文字どおり小銭を数えられるので、家計の管理に便利だ。カードで支払うと、つい持っていないお金を使って借り過ぎてしまうことを、みんな知っている」
「今週あと30ポンドしかない場合、紙幣と硬貨でそれを持っているのが、予算を立てて支出うをコントロールするうえで最も効果的な方法だ」
サルフォード大学に通うキラ・ヘイワードさんは、ソーシャルメディアからインスピレーションを得て、生活費の上昇に対処しようと、銀行口座から現金を引き出した。

彼女は現金を、異なるラベルをつけた封筒に保管。食費や請求書の支払いのためのお金を確保しているという。
「インスタグラムやユーチューブで、こうした物理的な予算管理法を知った」と、彼女は5月にBBCに話した。「銀行からお金を引き出し、買い物などの予算を立てている。今月は個人的な買い物のために80ポンドあると分かれば、それ以上はだめだと分かる」
多くの銀行が支店を閉鎖するなか、人々が必要な現金を手に入れられるよう、郵便局などが役割を果たすことが求められていると、シーニー氏は述べた。特に、デジタルバンキングにアクセスできない弱者や高齢者が、現金を入手できるようにすることが大事だとした。
「現実には、デジタルはすべての人の役に立つわけではない」と、シーニー氏は言った。
「コンピューターやスマートフォンにアクセスできない人は何百万人もいるのだから、現金は存続させなくてはならない」






