ロシア軍の人口密集地への攻撃続く、市民避難の「妨げに」 ウクライナ侵攻12日目

ロシアによるウクライナ侵攻12日目の7日、ロシアはウクライナの首都キーウ(キエフ)など4都市で市民らを避難させる「人道回廊」の設置を提案した。しかし、人口密集地に対するロシア軍の砲撃は止まなかった。

ウクライナ外務省によると、南東部マリウポリ、ヴォルノヴァハ、北東部スーミ、東部ハルキウ(ハリコフ)での激しい攻撃は7日も続き、市民の避難が妨げられたと説明した。

ロシア国防省は先に、キーウ、ハルキウ、マリウポリ、スーミの4都市で、市民らの「人道回廊」を設定すると発表。モスクワ時間の7日午前10時(ウクライナ時間同9時、日本時間午後4時)から停戦を実施するとしていた。脅威にさらされている一部地域から、これで市民を避難させられると、ロシア側は説明していた。

ロシアの国営通信社RIAによると、ロシアが7日に設定するとした避難ルートは6つ。うち4つは、ロシアかその同盟国のベラルーシが目的地だった。

そのため、ウクライナはロシア側の人道回廊の提案は「非道」だと反発していた。

ウクライナは各国政府に対し、停戦実現のためロシア政府に圧力をかけるよう求めた。

<関連記事>

首都近郊ではブチャやホストメルなどがロシア軍に掌握されており、ウクライナ側は危機的状況にあるとしている。

ウクライナ当局によると、キーウから北西約20キロに位置するイルピンではロシア軍による砲撃が続いているが、住民2000人が仮設の橋を使って避難したという。

ホストメル村議会は、パンと医薬品を配っていた最中にユーリ・プリリプコ村長が射殺されたと発表した。同村近郊には戦略的に重要なホストメル空港があるが、先月25日にロシア国防省は掌握したと発表した

キーウ西部ではパン屋が空爆を受け、少なくとも13人が死亡したと救助隊が発表した。

港湾都市で爆発音

ロシアの戦略的目標である南部港湾都市オデーサ(オデッサ)では、緊張が高まっている。

オーデサで取材するBBCのポール・ケニヨン記者は、街の西側から大きな爆発音が3、4回聞こえたと報告。沖合にあるロシア軍艦から発射されたミサイルを、ウクライナの防衛システムが撃ち落としたとされる。

ウクライナ軍は7日未明にロシア艦隊の1隻を攻撃し、大きなダメージを与えたと主張している。ソーシャルメディアには、喜ぶ兵士の姿を捉えた画像が投稿された。

オデーサでは毎日午後7時以降の外出禁止令が出されている。7日には空襲警報のサイレンが1時間以上鳴り響き、ロシアの艦船が攻撃に向けて態勢を整えているとの警告が発令された。

「勝利のためにウクライナに留まる」

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7日、最新のビデオ演説を投稿し、キーウ市内の大統領執務室に留まっていると語った。

「隠れてなどいない。そして私は誰も恐れていない。この戦争に勝つために必要な限り(私はキーウに留まる)!」

ゼレンスキー氏はこの動画を撮影しているのが7日夜だと証明するため、キーウ中心部にある大統領執務室から見える景色を映した。

ゼレンスキー氏は6日夜の演説でも、「どれだけの家族がウクライナでこのような死に方をしたか。私たちは許さない。私たちは忘れない。この戦争で残虐行為を犯した全員を処罰する。この国で」と対抗する姿勢を貫いた。

また、ウクライナに侵攻したロシア部隊が意図的な殺人を犯していると非難した。

「お前たちのための静かな場所など地球上には存在しない。墓を除いては」

ウクライナ当局によると、ロシアが民間人を標的にし、病院や保育園、学校などを攻撃していると主張している。

一方でロシアは、民間人への攻撃を否定。「民族主義者」や「ネオナチ」に対する「特別軍事作戦」を実施しているとしている。

民間人400人超が死亡

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ウクライナ侵攻が始まってから2週間足らずで少なくとも民間人406人が死亡し、801人が負傷した。負傷者の多くは、ウクライナ東部ドネツクとルハンスクで確認されているという。

この数字は控えめな推定値で、OHCHRは「実際の人数はかなり多いと考えられる」としている。

戦時中に犠牲者数について裏付けを取るのは、特に激しい敵対行為が行われている間や場所では極めて難しい。

国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏は先週末、現在150万人以上がウクライナから逃れていると述べ、「第2次世界大戦以降、欧州で最も急速に拡大している難民危機」に相当すると指摘した。

イギリスを目指す人たちがカレーで足止め

約300人のウクライナ人がフランス・カレーからイギリスに入国しようとして、カレー港で足止めされた。ウクライナから避難する人の多くが、カレーを経由してイギリスを目指している。

カレーの地元当局によると、ロシアの侵攻開始から約590人がカレーにたどり着いた。イギリス当局は286人の入国を拒否したという。

英内務省はこれまでに、約300人のウクライナ人に査証(ビザ)を発行し入国を認めている。ウクライナ人がイギリス国内にすでに住む家族と合流するための制度を通じ、これまでに1万7000人がイギリス入国を申請している。

カレーで足止めされた複数のウクライナ人はBBCに対して、家族合流ビザを申請したものの、面接審査まで1週間待つよう言われたと話した。しかし内務省は、欧州各地のビザ申請事務所で面接時間の空きがあると強調する。

ボリス・ジョンソン英首相は7日、イギリスは「とても寛大な国」だとした上で、誰が入国するのか監督し続けたいと述べた。

3回目の停戦交渉

こうした中、ロシアとウクライナの代表団は7日、3回目の停戦交渉をベラルーシで行った。ウクライナ代表団のミハイロ・ポドリャク大統領顧問は人道回廊をめぐり「小さな進展」があったと述べた。

ロイター通信は、ウクライナの交渉担当者の話を引用し、より広範な状況を大幅に改善するような合意には至らなかったと伝えた。

ロシア側は、ベラルーシでの協議は「我々の期待に沿うものではなかった」とした。

両者は交渉を継続するとしている。

中国外相、「国際社会と仲裁」も

中国の王毅外相は7日、中国側がロシアの行動に失望しているのかどうかや、ウクライナで起きていることを「侵攻」と表現することを中国政府が拒否したことで中国自体の国際的地位が低下したと思うか、記者会見で問われた。

王外相は「侵攻」という言葉については答えなかったが、この危機を解決するため「必要であれば国際社会とともに仲裁の一端を担う意思がある」と述べた。

一部のアナリストからは、中国政府が地政学的な優位を得るため、ウクライナでの紛争を利用しているとの指摘が上がっている。

BBCのスティーヴン・マクドネル中国特派員は、中国にロシアのウラジーミル・プーチン大統領に侵攻をやめさせるだけの影響力があるのか、さらには休戦をどの程度望んでいるのか、疑問視されていると指摘する。

ロシア人記者から、侵攻に対する制裁について問われると、王外相は中国とロシアは共に、「冷戦思考を復活させようとする」のは反対だと述べた。

原油価格、10年超ぶり高値

世界の金融市場ではウクライナ侵攻の影響が続いている。世界的経済ショックが懸念される中、石油・ガス価格は高騰している。

原油価格は7日、一時1バレル139ドルまで跳ね上がり、約14年ぶりの高値となった。

アメリカがロシア産原油の輸入禁止を検討していると発表するなどしたことが、価格の高騰につながった。

ただ、すべてのEU諸国が同様の禁輸措置を導入する用意ができているわけではない。

ロシア産エネルギー資源に大きく依存する大国ドイツとイタリアは、石油・ガスの輸入に対する制裁を科した際に起こり得るエネルギー価格の高騰に、より危機感を抱いていると、BBCのカティヤ・アドラー欧州編集長は指摘する。