チャド大統領が死亡、交戦地帯を視察中に負傷 軍発表

アフリカ・チャドのイドリス・デビ大統領(68)が、先週末に国内の反政府勢力との交戦地帯で軍の最前線を視察した際に負傷し、それが原因で死亡したと、軍が20日発表した。

軍は20日に国営テレビで、デビ大統領が「戦場で主権国家を守りながら息を引き取った」と述べた。

デビ氏は先週末、首都ヌジャメナから北に数百キロ離れた交戦地帯の最前線に赴き、「ファクト(チャドの変革と調和のための戦線)」と名乗るグループの部隊と戦う政府軍を視察していた。

軍は政府と議会の解散を発表。夜間外出禁止令も出され、国境が封鎖された。

国葬は23日に執り行われる予定。

30年以上政権率いる

30年以上にわたりチャドを統治してきたデビ氏は、アフリカで最も長く権力を掌握し続けた指導者の1人だった。

デビ氏は陸軍出身で、1990年の武装蜂起で実権を握った。アフリカのサヘル地域におけるジハーディスト(イスラム聖戦主義者)との戦いにおいて、フランスをはじめとする西側諸国と長年にわたり同盟を結んでいた。

今月11日に実施された大統領選では、19日の暫定開票結果で、デビ氏が6回目の当選を果たす見通しとなっていた。

後継に息子

今後18カ月間はデビ氏の息子で陸軍大将のマハメト氏(37)率いる暫定軍事評議会が政権を担うこととなる。

軍は声明で、マハメト氏が評議会を率いるとしつつ、移行期間終了後は「自由で民主的な」選挙が行われると説明した。

同氏はその後、新しい統治組織を構成する軍人14人の名前を発表した。BBCモニタリングのジャーナリストがその通知のコピーをツイートした。

複数の専門家はBBCや他の放送局に対し、この動きは違憲であり、現職大統領が死亡した場合は議会議長が引き継ぐべきだと述べている。

デビ氏は大統領選で、地域に平和と安全をもたらすことを公約に掲げて選挙活動を展開。開票の暫定結果では約80%の票を獲得していた。

一方で、チャドの石油資源を管理するデビ政権への不満も高まっていた。

フランス大統領府は声明で、デビ氏は「勇敢な友人」で、チャドの安定に熱心に取り組んでいたとした。フランスは長年にわたりチャドへ軍隊や戦闘機を派遣し、デビ氏に敵対的な勢力との戦いを支援してきた。

欧米の支援を受けているチャド軍は、サヘル地域でイスラム過激派と戦うG5サヘル諸国(マリ、モーリタニア、ブルキナファソ、ニジェール、チャド)の中で最も影響力があると考えられている。

リビア、スーダン、中央アフリカ共和国を含むこの地域では、武装グループが自由に行き来し、武器や収益性の高い資源を取引することで紛争を助長していると、BBCのキャサリン・バイアルハンガ記者は指摘。そうした中で、チャドの情勢がより安定していることはしばしば証明されてきたと説明した。

「ファクト」とは

2016年に結成された反政府組織「ファクト」は、デビ大統領が選挙に向けて弾圧を行ったと非難している。

ファクトはチャド北部とリビア南部の一部にまたがるティベスティ山地に拠点を築いている。

選挙当日、同組織は国境検問所を攻撃し、徐々にヌジャメナへと前進していった。

直近の衝突は17日に勃発した。ロイター通信は軍の話として、反政府勢力の300人が死亡し、150人が拘束されたと伝えた。また、政府軍兵士5人が死亡、36人が負傷したという。

首都ヌジャメナにある複数国の大使館は、職員に退避を求めている。

在ヌジャメナの元BBCジャーナリスト、マハマト・アダモウ氏は状況は比較的落ち着いているとしている。

「市民はただショックを受けている。デビ大統領が負傷していたことや、戦闘の最前線に行っていたことを多くの人は知らなかったので」

「繁華街では重要な交差点などに装甲車が配置されている。もちろん、『何が起こるかわからない』という感覚はあるが、それ以上のことはない」

ヌジャメナは以前にも反政府勢力の攻撃を受けたことがある。19日には主要道路に戦車が配備され、親が子供を学校から帰宅させるなど市内がパニックに陥った。