イスラエル、ガザ市に身を寄せるパレスチナ人に避難命令 開戦以来最大規模

イスラエルは14日、パレスチナ・ガザ地区北部ガザ市の民間人に対し、避難命令を出した。ガザで現在の戦争が始まって以来、最大規模の避難命令となる。

この避難命令は、ガザ市の大部分が安全な場所ではないと知らしめるもの。同市に身を寄せている人々は、イスラエル国防軍(IDF)が「激しい攻撃」を開始する前に街を離れるよう命じられた。同市の一部はすでに、イスラエルの爆撃によって破壊されている。

イスラエルはいくつかの建物について、イスラム組織ハマスに関係したものだとしている。それらには、イスラム大学、アル・シファ病院、かつては学校だった3施設も含まれている。

これらをハマスが「指揮統制センター」として使用していると、イスラエルは主張している。

しかし、地元当局や援助機関は、これらの場所には何千人もの民間人が身を寄せていると主張。対象地域から民間人を避難させるのには時間がかかり、膨大な数の死傷者が出る可能性があるとしている。

軍事作戦の「大幅な拡大」の兆候

今回の避難命令は、イスラエルがガザでの軍事作戦を大幅に拡大することを示す不吉な兆候といえる。

ガザでの軍事作戦の拡大に反対を表明しているイスラエルの大物は数少ない。イスラエルのエフード・オルメルト元首相はそのうちの1人だ。

オルメルト元首相はBBCのインタビューで、「ほとんどのイスラエル国民は、今起きていることに反対している。(軍の)司令官の多くは、軍事作戦の拡大に反対していて、今すぐに戦争を終わらせたいと思っている」と語った。

オルメルト氏はたびたび、ベンヤミン・ネタニヤフ現首相を声高に批判してきた。その見解は、20カ月におよぶガザでの戦争がイスラエルの士気や経済、国際的地位に与える影響をめぐり、懸念が高まっていることを反映している。

この戦争がガザ住民に与える人道的影響についても、オルメルト氏は率直に語った。

「(この戦争は)まったく耐え難いもので、容認することも、許すこともできないものだ。直ちにやめる必要がある」

オルメルト氏はイスラエル政府寄りのメディアから、「パレスチナ人のためにロビー活動をしている」と非難されている。

「(ガザ)住民の人道的ニーズをすべて提供しなければならない。ガザで飢饉(ききん)が始まることは、道徳的に許されない。それは止めなければならない」と、オルメルト氏は付け加えた。

こうした意見が、イスラエルのメディアや世論調査に反映されることはほとんどない。しかしここ数日、国連機関や援助機関、そしてイスラエルの同盟国の一部による熱のこもった演説の中で、繰り返し訴えられている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、イスラエルの行動は「恥ずべきもの」だとした。ネタニヤフ首相は、マクロン氏は「ハマスを支持している」と非難した。

支援物資の遮断で「飢饉のリスク」

イスラエルは、10週間にわたり、ガザへの食料、医薬品、燃料などの支援物資の搬入を遮断している。これがガザ全域に深刻な苦しみをもたらしていることを示す証拠が増加している。

国連が支援する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の12日付の最新報告書によると、ガザ地区で暮らす約210万人のパレスチナ人は、飢饉の「重大なリスク」に見舞われており、「極度の食料不安」に直面しているという。

世界保健機関(WHO)は、十分な栄養が取れる食料や清潔な水、医療にアクセスできなければ、ガザの全住民が永久的に影響を受けることになると指摘している。

イスラエル政府のダヴィド・メンサー報道官はBBCに対し、「イスラエルは、ガザを飢餓に陥らせているわけでは決してない」と主張した。

「ガザで飢えている人がいることに異論はないが、それはハマスがもたらしたものだと、我々は考えている。ガザには食料があるという情報を我々は得ている。飢饉は起きていない」

1月19日に発効したイスラエルとハマスの停戦合意は、3月に事実上崩壊した。イスラエルは3月18日にガザでの軍事作戦を再開した。ハマス運営のガザ保健省によると、それ以来、ガザでは2799人が死亡している。うち80人は今月14日に死亡したという。

アメリカが提案した停戦案を、イスラエルとハマスが受け入れるかもしれないという淡い期待もある。この停戦案は、ガザに残る人質の解放と引き換えに、停戦(期間は不明)を実施するというもの。

しかしネタニヤフ氏は、この戦争は何も止められないとし、ガザでの軍事作戦を拡大するつもりだと述べている。一方でハマスは、イスラエルが恒久的な停戦に合意し、ガザから撤退しない限り、残りの人質は解放しないとしている。

ハマスから解放された元人質67人は14日夕、残りの人質を帰国させるための「包括的な取引」を結ぶようネタニヤフ氏に求める書簡に署名した。

書簡には、「イスラエル社会の大多数は、軍事行動を停止してでも人質の帰国を望んでいる」と書かれている。

被害者家族の団体「人質・行方不明者家族フォーラム」は、イスラエル系アメリカ人のイダン・アレクサンダー氏(21)が12日に解放されたことを受け、「歴史的な機運」を築くために書簡が作成されたと説明した。

ハマス高官は同氏の解放について、ドナルド・トランプ米大統領の13日からの中東訪問を前にした、善意の表明で、新たな停戦合意に向けた取り組みの一環だとBBCに語っていた。

67人の元人質は書簡で、「この歴史的な機運を止めさせない」ようトランプ氏に求めた。

イスラエルの放送局チャンネル12が4月末に実施した世論調査では、回答者の68%が、戦争終結を意味するとしても、人質解放をめぐる取引をハマスと結ぶことを支持するとした。ガザでの戦闘継続を支持したのは22%にとどまった。

ネタニヤフ氏は、これまでのところ動じるそぶりは見せていない。

外交筋によると、ネタニヤフ氏の側近の1人は、「(停戦を実現するという)アメリカの決意とはうらはらに、ネタニヤフ首相の姿勢に変化はない。イスラエルは戦争終結は認めない」と語ったという。

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、251人を人質としてガザに連れ去った。これを受けてイスラエル軍はガザでハマス壊滅作戦を開始した。

ハマス運営のガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで少なくとも5万2928人が殺された。