トランプ前米大統領、裁判長の交代求めると 大統領選めぐる裁判で

2020年米大統領選の結果を覆そうとしてアメリカ国民を欺いた罪などで起訴されているドナルド・トランプ前大統領は6日、審理を担当するワシントン連邦地裁の判事の交代を求めるつもりだと主張した。

トランプ前大統領は自らのソーシャルメディアに、タニヤ・チャトカン判事に事件の担当から退くよう求める「強力な根拠」があると主張。チャトカン判事が担当判事である限り、「自分が公平な裁判を得られるわけがない」と全文大文字で強調しながら書いた。

前大統領は、自分に対する裁判について「表現の自由・公平な選挙に関するばかげた事件」とも書いた。弁護団がただちに裁判長の交代を求めるとも書いたが、その根拠については触れなかった。

前大統領はさらに、事件の審理をワシントン以外で行うよう求めるとも書いた。前大統領はかつて、現在の首都ワシントンは「反トランプ」なため、「ワシントンで公平な裁判を得るのは不可能だ」としていた。

前大統領は、自分を起訴したジャック・スミス特別検察官についても「狂って」いるとし、司法省のことも「きわめて腐敗して偏向している」と、全文大文字で書いた

2020年大統領選の結果を覆そうとしたとしてトランプ前大統領は1日、以下の四つの罪で起訴された。前大統領は3日にワシントンの連邦地裁に出廷し、無罪を主張した

  • アメリカを欺くための共謀
  • 公的な手続きを妨害するための共謀
  • 公的な手続きの妨害
  • 市民の権利を妨げるための共謀

この事件を担当するチャトカン判事は、2014年にバラク・オバマ大統領(当時)によって、ワシントン(コロンビア特別区)の連邦地裁判事に指名された。

チャトカン判事は2021年11月の時点で、同年1月の連邦議会襲撃事件について調べる下院特別委への証拠開示を拒む前大統領の主張を退ける判決を出している。

また米NBCニュースによると、連邦議会襲撃への関与で起訴された被告に対して、検察の求刑よりも重い量刑を言い渡している連邦判事は、ワシントンではチャトカン判事だけという。 さらに米紙ワシントン・ポストによると、連邦議会襲撃に関して自分が審理を担当した被告31人全員に、チャトカン判事は何かしら実刑判決を言い渡している。こうしたことから判事は、議会襲撃の実行犯に厳しい判決を出す裁判官としての評価を得ている。

合衆国法典は、裁判官の不偏性が合理的に疑われる場合、その裁判官は審理から退くものと定めている。

裁判長の交代要求に先立ち、前大統領は法廷で無罪を主張した翌日、「こっちをやっつけようとするなら、こっちがお前をやっつけにいく!」とすべて大文字で強調しながら書いていた。これを受けて、スミス特別検察官は4日夜、前大統領が今後、大陪審記録など非公開資料を公開してしまう懸念があると、裁判所に「protective order(保護命令、秘密保持命令)」を出すよう求めた。弁護団は回答期限を3日延期するよう求めたがチャトカン判事はそれを退け、7日夕までに回答するよう命じていた。

弁護団は回答期限を3日延期するよう求めたがチャトカン判事はそれを退け、7日夕までに回答するよう命じていた。これについて弁護団は7日夕、前大統領の表現の自由を侵害する動きだと反論。チャトカン判事は、近く保護命令について審理する方針を示した。

前大統領を担当するジョン・ローロ弁護士は6日、複数のアメリカのニュース情報番組に出演し、前大統領は2020年大統領選に自分が勝ったのだと「心から信じて」いると主張。前大統領が当選を信じて行動したことに対する今回の起訴は、合衆国憲法修正第1条が保障する表現の自由を侵害するものだと主張した。

チャトカン判事は8月28日に検察と弁護団を集め、具体的な審理に入る公判期日を決める見通し。

検察側はすでに、この裁判には素早い審理がふさわしいと述べている。しかし、前大統領側のローロ弁護士は、なるべく長い準備期間が必要だと反論。検察側が捜査に3年かけたのだから、弁護側にも相応の時間が必要であり、検察が示す審理日程は「ばかげている」としている。

前大統領はこれまでに、機密文書を不正に取り扱ったとされる事件と、ポルノ女優に対する口止め料の支払いを隠すため事業記録で不正を行ったとされる事件で、それぞれ司法省とニューヨーク州検察に起訴されている。

加えて、ジョージア州の検察当局は、同州における2020年大統領選の結果を覆そうと画策したとして、前大統領を今月中に起訴する可能性がある。

トランプ前大統領が訴えられている裁判は、刑事・民事で合わせて5件が進行中ということになる。一連の訴訟に伴い、前大統領の主要政治資金団体が今年だけで払った弁護士費用は4000万ドル以上だという。

トランプ前大統領は2024年11月の大統領選で再選を目指しており、現時点で共和党の候補指名獲得レースで圧倒的なリードを維持している。