ジョンソン英内閣が改造、ラーブ外相が実質降格 後任にトラス氏

イギリスのボリス・ジョンソン首相は15日、内閣改造に着手した。アフガニスタンからの撤退計画を指揮していたドミニク・ラーブ氏を外相から外し、後任にリズ・トラス前国際貿易相を起用するなど、大幅な入れ替えが目立っている。

ラーブ氏は法相へ異動。また、教育相だったギャヴィン・ウィリアムソン氏と、住宅相のロバート・ジェンリック氏が閣僚から外れた。

一方、リシ・スナーク財務相とプリティ・パテル内相、サジド・ジャヴィド保健相、ベン・ウォレス国防相は続投が決まった。

英首相官邸は今回の改造について、「パンデミックからの再建のため、強力で団結したチームを作る」と説明している。

ジョンソン首相はツイッターで、「きょう指名した内閣は今後、イギリス全体を団結させ、レベル・アップさせるために休みなく働く。この国をパンデミックから再建し、皆さんの優先事項を達成する」と語った。

ジョンソン内閣は2019年12月に発足後、翌2020年2月に最初の内閣改造を実施。今回が2回目の改造となる。

首相は16日には、閣外大臣などの人事も発表する予定。

保守党政権で初の女性外相

ラーブ氏の後任として外相に任命されたトラス氏は、国際貿易相から一気に内閣の主要ポストに就いた。

トラス氏は、保守党政権では初の、イギリスでは2人目の女性外相となる。トラス氏は記者団に対し、外相就任を喜んでいると述べ、「国際的なイギリスの前向きで外向きのヴィジョンを推進していきたい」と語った。

BBCのジェイムズ・ランデイル外務担当編集委員は、トラス氏について、国際貿易相としてブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)後の交渉のために各地を飛び回っており、外交界ではすでに知られた存在だと説明。人間的な外交が求められる場面で個性を発揮するだろうと分析した。

来週にはさっそく、ジョンソン首相と共に米ニューヨークの国連総会に出席することになるほか、11月に英グラスゴーで開催される「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」の成功の鍵を握ることになる。

そのほかの顔ぶれは

国際貿易相の後任には、アン=マリー・トリーヴクライン氏が決まっている。

また、ベストセラー作家で保健次官を務めていたナディーン・ドーリース氏が文化相として初入閣。

教育相にはウィリアムソン氏に代わり、ワクチン担当閣外相だったナディム・ザハウィ氏が任命され、初入閣を果たした。

閣僚経験の長いマイケル・ゴーヴ氏は今回、内閣府担当閣外相兼内閣府長官兼ランカスター公領相から住宅・地域社会・地方政府相へ異動。その上で、ジョンソン政権の「レベリング・アップ」政策の責任者に任命された。国内の経済格差の是正を目指すほか、スコットランドの独立をめぐる住民投票の政府側担当者となる。

このほか、文化相だったオリヴァー・ドウデン氏が内閣府担当閣外相になるとともに、与党・保守党の共同幹事長に就任した。

今回の内閣改造では、女性2人が新たに入閣したものの、全体では1人減って5人となった。一方、非白人を表すBAME(黒人、アジア人および少数民族)の閣僚は5人と、こちらは1人増えている。

ラーブ氏は実質的な降格

ラーブ氏をめぐっては、首相官邸に呼ばれた際、ジョンソン首相と長時間にわたって議論したと報じられている。

結局、外相からは外れたものの、法相と大法官に加え、正式に副首相の地位も手に入れた。

関係筋は、ラーブ氏は今回の人事に憤慨はしていないとしている。しかし同氏は、自身のアフガニスタン政策に対する評価に満足していないと伝えられている。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、ジョンソン首相とラーブ氏が内閣改造の当日に長々と議論をしたことが、ラーブ氏の抵抗を物語っていると指摘。また、首相官邸は今回の異動がアフガニスタンをめぐるラーブ氏への罰とは見られたくないと思っていると述べた。

そしてラーブ氏について、副首相という地位を得てもなお、外相という政府の要職からの実質的な降格であることは明確だと分析した。

一方、最大野党・労働党のデイヴィッド・ラミー影の法相は、「戦闘中行方不明になったことで解雇された外相が、過去6年で6人目の法相となることで、この政権がいかに犯罪被害者を軽視しているかがわかる」と批判した。

教育相だったウィリアムソン氏は、パンデミック中の学校や試験の取り扱いで大きな批判を浴び、与野党双方から辞任や罷免を求める声が出ていた。

労働党のケイト・グリーン影の教育相は、ウィリアムソン氏について、「イギリス史上最も厳しい時期に、子供や若者、その親たち、そして一生懸命に働く教職員をないがしろにした」と批判した。

また、ラーブ氏が法相となったことで、前任のロバート・バックランド氏も内閣から離れることになった。

BBCのドミニク・カシアーニ内政担当編集委員は、バックランド氏は法曹界では名の通った人物だったものの、刑事法院に5万8000件の重犯罪事件を残して職を去ることになったと指摘している。

一方で、後任のラーブ氏もこの問題の解決のために指名されたわけではなく、むしろ人権法に反対している同氏が法相としてどのような立場をとるかに注目が集まると述べた。