オーストラリアでデルタ株拡大 「新たな局面」に入ったと豪財務相

People wearing masks outside the Sydney Opera House

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画像説明, シドニー全域で7月9日までロックダウンが敷かれる。写真はオペラハウス前を歩くマスク姿の人々

オーストラリア最大の都市シドニーで28日までに、新型コロナウイルスのデルタ株の感染者が計128人に達した。デルタ株はインドで初めて確認された変異株で、従来株より感染力がきわめて高い。

オーストラリア北部ノーザン・テリトリーとクイーンズランド州、西オーストラリア州でも複数の陽性者が確認されている。

豪国内の複数地域で同時に感染者が確認されたのは、ここ数カ月で初めて。

連邦政府と各州政府は28日中に緊急協議をする予定。

ジョシュ・フライデンバーグ財務相は、各州がさらなる感染拡大を防ぐために州境を閉鎖し、新たな規制を敷いていることから、「重要な時期」にあるとした。

「より感染力の強いデルタ株が広がっていることから、このパンデミックが新たな局面に入っていると考えている」と、フライデンバーグ氏は28日、豪ABCニュースに述べた。

シドニーなどでロックダウン

感染拡大を受け、ニューサウスウェールズ州シドニーとノーザン・テリトリーのダーウィンはロックダウンに入った。また、4つの州で規制が敷かれている。

最も深刻な状況に見舞われているのはシドニーで、住民約500万人に自宅待機命令が出されている。

ニューサウスウェールズ州政府は27日、ロックダウンの対象地域を大シドニー圏、ブルー・マウンテンズ、セントラル・コースト、ウロンゴンの全域に拡大した。

Health workers are seen at Bondi Beach Drive-through Covid-19 Clinic

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画像説明, 人気スポットのボンダイビーチでは、ドライブイン検査施設に車が並んだ(26日、シドニー)

多くの事業や施設にも閉鎖命令が出された。

ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン州首相は28日、新たに18人の感染が確認されたと発表した。前日の新規感染者は30人で、12人減少した。過去24時間で5万9000人近くがウイルス検査を受けた。

「この(デルタ)株では、家庭内感染がほぼ100%の割合で起きている。そのため、我々は感染者数が変動し、大幅に増加するのに備えておかなければならない」と、ベレジクリアン氏は述べた。

旅客機の乗客乗員に連絡

西オーストラリア州で確認された感染は、シドニーでのデルタ株の感染拡大に起因している。一方で、クイーンズランド州とノーザン・テリトリーでのクラスター(小規模な集団感染)は、ホテルでの隔離を完了したにも関わらずその後感染が確認された人たちと関連がある。

ノーザン・テリトリーの遠隔地域で27日に4人の感染が確認されたことを受け、ダーウィンをはじめとする計3つの町が48時間のロックダウンに入った。

オーストラリア地図
画像説明, オーストラリア・ニューサウスウェールズ(New South Wales)、クイーンズランド(Queensland)、ノーザン・テリトリー(Northern Territory)、西オーストラリア(Western Australia)で新型ウイルス対策の制限が敷かれている

こうした中、豪ヴァージン・オーストラリア航空は27日、メルボルンで乗務員1人の陽性が確認されたため、最近の国内便5便の乗客と乗務員に連絡をとっていると明らかにした。

一方、ニュージーランド政府は26日、オーストラリアでの感染者急増を受けて、両国間で入国時の隔離を不要にしていた自由渡航を少なくとも29日まで中断すると発表した。

両政府は今年4月に1年ぶりに自由渡航を再開した。その後、オーストラリアの一部地域を対象に短期間のみ中断することがあったが、オーストラリア全域が対象になるのは今回が初めて。

A man crosses a deserted street in central Sydney during lockdown

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画像説明, 閑散としたシドニー中心部(28日朝)

オーストラリアは国境を閉鎖し、厳格な隔離措置や迅速な検査・追跡システムを導入し、新型ウイルスの感染率を極めて低い水準に抑え込んできた。

今年に入ってからは新型ウイルス感染症COVID-19による死者は出ていない。同国の累計死者数は910人、累計感染者数は3万450人。

しかし、より感染力の強いデルタ株は同国の防御力を低下させており、今年は複数の小規模な感染が発生している。

ニューサウスウェールズ州のブラッド・ハザード州保健相は、デルタ株を「非常に手ごわい敵」と呼び、「現時点のあらゆる防御策について、デルタ株は反撃方法を理解しているようだ」と述べた。

シドニーでの感染者増加は先週、人気スポットのボンダイビーチで最初に確認され、市の中心部や西側へと広がっていった。

入国者を空港からタクシーに乗せた運転手を経由して、デルタ株の感染が拡大したとされている。

ワクチン接種の状況は

ニューサウスウェールズ州政府は、パーティー参加者30人中24人が感染したシドニーの集団感染について、感染しなかった人はワクチンを接種していたと指摘。州民に接種を受けるよう呼びかけている。

「ワクチンを接種していれば、COVID-19に感染しない可能性が高くなる」と、ハザード氏は28日に記者団に述べた。

今回の感染者急増によって、連邦政府が展開するワクチン接種事業が遅いとの批判が再燃している。

オーストラリアで接種を完了した人は成人人口の約5%。米ファイザー製か英アストラゼネカ製いずれかのワクチンの1回目の接種を受けた人は約30%。人口の大半が接種を終えれば、ロックダウンは二度と必要ないはずだと政府を批判する声が出ている。

しかし、アストラゼネカ製ワクチンは、まれな血液凝固異常との関連性が指摘されており、接種をためらう声が大きくなっている。一方でファイザー製の接種は特定の年齢層に限定されている。