米国、領空開放条約から離脱を表明 ロシアの違反理由に

アメリカは21日、非武装の偵察機を批准国の領域内で飛ばすことなどを認める「領空開放(オープンスカイズ)条約」から離脱すると表明した。

領空開放条約は2002年に発効した。批准国間の信頼を高め、攻撃がないことを確認することが目的。

しかし米政府高官によると、アメリカは、ロシアがこの条約に繰り返し違反したため離脱するという。

ドナルド・トランプ米大統領はその後、ロシアと「新たな合意に達する可能性は非常に高い」と述べた。

「我々はロシアと非常にいい関係を築いていると思うが、ロシアはこの条約を順守しなかった」と、トランプ氏は21日に述べた。そして、「ロシアが順守するまで我々は撤退するだろう」と付け加えた。

アメリカの離脱は6カ月後に正式に完了するという。

ある当局者はロイター通信に対し、「今回の見直しの中で、領空開放条約の批准国であり続けることは、もはやアメリカの利益ではないことが極めて明白になった」と述べた。

同条約の批准国はロシアやカナダ、イギリスなど34カ国。

ロシアの反応は

ロシア外務省は同条約に違反はしていないと主張。アメリカの離脱は「非常に遺憾だ」とし、トランプ政権は「軍備管理におけるすべての合意を台無しにしようと」していると付け加えた。

同省のアレクサンドル・グルシュコ副大臣は、ロシア国営RIAノーボスチ通信に対し、「我々はこの基本合意からの離脱を正当化しようとするいかなる試みも拒否する」と述べた。

「アメリカがロシアによる違反だと偽っている、技術的問題についての議論の継続を妨げるものは何もない」

グルシュコ氏は、条約からの離脱は、すべての批准国の利益に影響を与えるとしている。批准国の中には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国も含まれる。

マーク・エスパー米国防長官は今年3月、ロシアが同国カリーニングラードやジョージア近郊の複数地域上空での飛行を禁止し、条約に違反したとして非難していた。

「今の状態では、この条約に多くの懸念がある」と、エスパー氏は当時述べていた。「我々のNATO同盟国の多くにとって、他国の領域で飛行する手段を持つことは重要だ」。

トランプ政権はこれまでも、主要な国際的取り決めからアメリカを離脱させようとしてきた。

昨年8月、アメリカは旧ソ連と冷戦中に結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱した。

1987年に締結されたINF全廃条約は、射程範囲500~5500キロの核弾頭および通常弾頭を搭載した地上発射型の短距離および中距離ミサイルの廃棄を定めたもの。

アメリカの同盟国を困らせる展開に

領空開放条約からの離脱は、トランプ政権が、冷戦時代に透明性を保つために不可欠とされた軍備管理合意を放棄するだけでなく、多くの専門家がアメリカにとって今も大きなメリットがあると考えている合意を放棄することでもあると、BBCのジョナサン・マーカス防衛外交担当編集委員は指摘する。

軍備管理の構造全体が崩壊し、大国間競争の新時代に差し掛かっている中での領空開放条約からの離脱は非常に厄介だ。

トランプ氏は、少なくとも条約から離脱しない可能性を残しているようだが、どうなるかはロシアとの協議にかかっているのは明らかだ。

ロシア外務省はアメリカの離脱はすべての批准国の利益に影響を及ぼすとしている。アメリカは衛星を使ってロシアに関する情報を集めることができるのは明らかだが、トランプ大統領の判断が、そのような衛星へのアクセスがほとんどない欧州の同盟国との緊張につながる可能性があると、マーカス氏はみている。