【原爆投下80年】 広島で平和記念式典 核に依存しない平和の取り組みを広島市長求める

シャイマ・ハリルBBC日本特派員(広島)、コー・ユーBBC記者

原爆投下から80年を迎えた広島で6日朝、平和記念式典が行われ、大勢が黙とうを捧げた。式典には石破茂首相をはじめ、世界各国の関係者が参列した。広島市長は日本と各国政府の首脳に、核兵器に依存しない平和構築の取り組みを強く求めた。

式典で広島市の松井一實市長は平和宣言を読み上げ、「核兵器のない平和な世界を創るためには、たとえ自分の意見と反対の人がいてもまずは話をしてみることが大事」だ述べた。

その上で、「しかしながら、米国とロシアが世界の核弾頭の約9割を保有し続け、またロシアによるウクライナ侵攻や混迷を極める中東情勢を背景に、世界中で軍備増強の動きが加速しています。各国の為政者の中では、こうした現状に強くとらわれ、『自国を守るためには、核兵器の保有もやむを得ない』という考え方が強まりつつあります。こうした事態は、国際社会が過去の悲惨な歴史から得た教訓を無にすると同時に、これまで築き上げてきた平和構築のための枠組みを大きく揺るがすものです」と警鐘を鳴らした。

広島から日本と各国政府に要請

市長は続けて、「世界中の為政者の皆さん。自国のことのみに専念する安全保障政策そのものが国と国との争いを生み出すものになってはいないでしょうか。核兵器を含む軍事力の強化を進める国こそ、核兵器に依存しないための建設的な議論をする責任があるのではないですか」と、各国政府に呼びかけた。

さらに、「日本政府には、唯一の戦争被爆国として、また恒久平和を念願する国民の代表として、国際社会の分断解消に向け主導的な役割を果たしていただきたい」と強く求めた。

市長はさらに、核兵器不拡散条約(NPT)が「機能不全に陥りかねない」と指摘したうえで、NPTが「国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石として有効に機能するための後ろ盾」に、核兵器禁止条約(2021年発効)がなるはずだとして、日本政府に対して「是非とも来年開催される核兵器禁止条約の第1回再検討会議にオブザーバー参加していただきたい」と求めた。

核兵器禁止条約は、70カ国以上が批准しているが、アメリカやロシアなどの核保有国は、核兵器の抑止力を理由に反対している。日本もまた、アメリカの核兵器によって自国の安全保障が強化されているとして、批准を拒否している。

式典でその後、登壇した石破茂首相は、「核軍縮を巡る国際社会の分断は深まり、現下の安全保障環境は一層厳しさを増しています。しかし、だからこそ、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎である核兵器不拡散条約(NPT)体制の下、『核戦争のない世界』、そして『核兵器のない世界』の実現に向け、全力で取り組んでまいります」とあいさつした。

第2次世界大戦は、アメリカが1945年8月6日と9日、広島と長崎に原爆を相次ぎ投下した後、日本が8月15日に降伏して終結した。

原爆によって数万人が即死したほか、放射線障害や火傷によって後に命を落とした人も大勢いた。1945年末までに、広島で約14万人、長崎で約7万人以上が死亡したとされる。被爆の後遺症は、今も生存者を苦しめている。

6歳の時に広島で被爆した内藤愼吾さん(86)はBBCに対して、父親が爆風で大やけどを負い、皮膚が垂れ下がり、目が見えなくなり、息子の手を握ることもできなかったと経験を話した。内藤さんの父親と、幼い弟と妹は命を落とした。内藤さんは現在、広島の高校生たちに当時の体験を語り、高校生たちがそれを絵にして残している。

2024年11月には、日本の被爆者団体「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」がノーベル平和賞を受賞。ノルウェー・ノーベル委員会は、被爆者の立場から世界に核兵器廃絶を訴えてきた被団協の活動を高く評価し、「核兵器のない世界実現を目指して努力し、核兵器は二度と使われてはならないのだと目撃者の証言から示したこと」を授賞理由とした。

ガザやウクライナと自分の体験を重ね

核兵器について、日本にはさまざまな意見がある。式典に先駆けて、平和記念公園の周りでは核廃絶を訴える抗議行動が小規模ながら続いていた。

被爆者の一人で被団協理事の田中聰司さん(81)はBBCに対して、パレスチナ・ガザ地区やウクライナで続く流血の事態に、自分の苦しみがよみがえってくると話した。

がんの手術を計6回受けたという田中さんは、ウクライナやガザの「あのがれきの山、破壊された街、逃げ惑う子供たちや女性たちを見るにつけ、私たちの体験を重ね合わせて思い出すんですよ。自分の体験と重ね合わせて」とBBCに話した。

さらに、「人類を何度も繰り返して皆殺しにする核と、我々は今一緒に住んでいるんです」とした。

そのうえで田中さんは、核保有国の首脳たちに働きかけるのが喫緊の課題だと強調。「本当に世界の民衆がもっともっと怒って、もっと声を大きくしていって、大行動を起こさなきゃ。(首脳たちを)動かさなきゃ。だって僕たちが叫んだことは全然知らんぷりして無視しているじゃないですか」と話した。