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イラク首相府で衝突、少なくとも15人死亡 有力指導者の引退発表で
昨年の総選挙以降、政情不安が続いているイラクで29日、有力指導者ムクタダ・アル・サドル氏(48)が政界から引退すると発表した。これを受け、サドル氏の支持者が首都バグダッドの首相府に乱入し、治安部隊と衝突。市街戦も起きており、多数の死者が出ているとみられる。
AFP通信は医療関係者らの話として、サダル氏支持者の少なくとも15人が射殺されたほか、約350人が負傷したと報じた。
イスラム教シーア派のサドル氏はツイッターでこの日、「私は政治的な問題に干渉しないと決めていたが、このたび、最終的な引退とすべての(サドル派の)機関の閉鎖を発表する」との声明を出した。
この2日前には、同氏は2003年のイラク戦争でサダム・フセイン政権が崩壊して以降に政治活動に関わった全ての人物と政党に対し、活動を終わらせるよう促していた。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この混乱に懸念を表明。「ただちに状況の緊張緩和に向けた対策」を取るよう呼びかけた。
サドル派のムスタファ・アル・カディミ暫定首相はこの日予定されていいた閣議を取りやめ、有力な宗教指導者らに事態への介入と暴力阻止を求めた。
また国営INA通信が取材したサドル氏の側近は、暴力と武器の使用が止まるまでサドル氏がハンガーストライキを行うと述べた。
軍が夜間外出禁止令
イラクでは昨年10月の議会選挙で、アメリカとイランの影響力排除を目指すサドル氏の率いる「政治連合」が最大会派となった。しかし、サドル氏はライバル勢力との協力を拒否。連立交渉は行き詰まり、政権を担えていない。今年6月には、対立勢力による首相任命に反対し、所属議員らが辞職した。
サドル氏の支持者らはここ数週間、対立勢力による新政権樹立の動きに抗議し、議事堂前でデモを行っている。7月と8月には2回にわたり、議事堂に乱入する騒ぎを起こしていた。
カディミ暫定首相は人々に冷静になるよう呼びかけているほか、バグダッド以外でも騒ぎが起きているため、軍が全国的な夜間外出禁止令を発した。
バグダッドでは、29日夜から30日朝にかけて市街地で銃撃戦が起きており、ここ数年で最悪の暴力事案となっている。衝突の大半は政府施設や大使館が集まる厳重警戒区域「グリーンゾーン」周辺に集中しているという。
治安部隊は、一部の衝突について、サドル派の民兵組織「平和旅団」とイラク軍によるものだとしている。ソーシャルメディアに投稿された映像では、戦闘員がロケット弾などの兵器を使用しているように見える。
こうした事態を受け、イランはイラクとの国境を一時的に閉鎖。クウェートはイラクにいる自国民に、直ちに出国するよう呼びかけた。
イラン政界の重要人物
サドル氏は過去20年にわたり、イラク政界の重要人物として活動してきた。同氏の民兵組織「マフディー軍」は、フセイン政権を倒したアメリカや、その同盟となったイラク政府軍と戦った最大勢力だった。
サドル氏はその後、マフディー軍を「平和旅団」と改名し、現在ではイラク軍を構成する最大勢力となっている。
マフディー軍にもイランとの関係はあるものの、サドル氏はイラクの他のシーア派勢力と距離を置き、イラク内政におけるアメリカとイランの影響を終わらせるナショナリストとしての立ち位置を確立した。
現時点で議会で最大会派となっているシーア派の政治連合「調整枠組み」には、イランの支援を得ている政党が多い。
サドル氏はこれまで、高い失業率や断続的な停電、汚職などに苦しんでいるイラク国民の支持を得てきた。大勢の支持者を迅速に集めたり解散させたりできる数少ない有力者でもある。政治が膠着(こうちゃく)状態にある中、サドル氏の支持者らは抗議デモや議事堂などへの乱入を繰り返している。