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英労働党のスターマー党首、抗議者に囲まれ罵倒される 首相発言に関連の内容も
イギリスの最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首が7日、公務中に抗議者たちに囲まれ、言いがかりをつけられて罵倒される騒ぎがあった。警察がスターマー党首を警護しながら建物外へ誘導し、警察車両でオフィスへ送り届けた。警察はこの件に絡んで2人を逮捕した。
騒ぎは7日午後5時ごろに発生。抗議者らからは、ボリス・ジョンソン政権の新型コロナウイルス対策に呼応したことについて「裏切り者」という声が上がったほか、「ジミー・サヴィル!」と叫ぶ者もいた。
テレビ司会者の故サヴィル氏をめぐっては、ジョンソン首相は1月末の議会で、没後に数々の性犯罪が明るみに出たサヴィル氏を、検察庁長官時代のスターマー氏が起訴しなかったと、証拠を示さずに発言。与野党からジョンソン首相に謝罪と発言の撤回を求める声が上がっている。
労働党は今回の騒ぎについて声明を発表していないが、スターマー党首にけがなどはなかったという。
ジョンソン首相はツイッターで、スターマー党首に対する行動は「全く恥ずべきもの」で、警察が「迅速に対応」したことに感謝すると書き、「選挙で選ばれた議員に対するいかなる嫌がらせも容認できない」と述べた。
7日の騒動は、スターマー党首がデイヴィッドー・ラミー影の外相と共に、テムズ川沿いにある国防省から、議員会館の入るポートカリス・ハウスへ歩いている最中に起きた。ポートカリス・ハウスは通りを挟んで議事堂前にある。
ソーシャルメディアに投稿された動画では、スターマー氏が警察車両へと誘導される様子が映っている。
抗議者らは、スターマー党首がワクチン接種事業を支持し、「与党に逆らわなかった」ことに抗議し、「裏切り者」と叫んだ。ワクチン義務化や、感染拡大を防ぐ制限に反対する旨のプラカードを持っている参加者もいた。
「新世界秩序のために働いていて楽しいか?」、「小児性愛者を守りやがって」という声も上がった。「ジミー・サヴィル」と怒鳴る声が入った動画もある。
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ロンドン警視庁は声明で、この件に関係して男女2人を逮捕したと発表した。
「2月7日月曜日午後5時10分過ぎ、ロンドン警視庁近くで抗議者に囲まれていた男性1人を、警察車両で現場から退出させた」
「警察車両にコーンが投げつけられたため、警官への暴行容疑で男1人と女1人を逮捕した。2人は現在、勾留されている」
プリティ・パテル内相は、この件について警察と連絡を取ったと述べ、「全く容認できない出来事だ」と話した。
ロンドンのサディク・カーン市長(労働党)はこの騒ぎの後、「今回の出来事は、本来分別を知っている人によってフェイクニュースが増幅され、信用性を得てしまった結果だ」と批判した。
保守党の議員からも、同様の声が上がっている。
閣僚経験者のサー・デイヴィッド・リディングトン議員(保守党)はBBCのラジオ番組に出演。ジョンソン氏の発言がスターマー党首に対する騒ぎの原因かという質問に対し、「首相は下院での発言が今回のような出来事に影響を与えると意図していなかったが、暴徒らは明らかに、首相が示したスターマー党首とジミー・サヴィルを起訴されなかったことの関連性に影響されている」と述べ、発言の撤回と謝罪を要求した。
ジョンソン氏の発言との関わりは
1月31日の議会でジョンソン氏はこの件について追及される中で、故サヴィル氏の不起訴に関するうわさに言及した。
スターマー党首に関するこの根拠のないうわさは、右派系陰謀論としてオンラインに出回っているもの。検察庁は、スターマー党首は検察庁長官としてサヴィル氏の件を担当しておらず、2013年の再検討にも関わっていないと述べている。
このため、与野党から首相は発言を撤回し謝罪するべきだとの声が上がり、ジョンソン氏は3日までに、「(スターマー党首が)個人的にこうした決断をする立場になかったことはよくわかっている」と、語調をやわらげた。
しかし、ジョンソン氏の側近をロンドン市長時代から14年間務めたムニラ・ミルザ政策主任は3日、31日の当初の首相発言を「下品な中傷」だと厳しく批判し、辞任した。
スターマー党首はこの発言について、「とんでもない中傷で、右翼のインターネット上の荒らしが広めているものだ」とコメント。首相からの謝罪はあり得るかとの質問には、「本人の振る舞いによる」と話していた。
どういう人たちが抗議しているのか
イギリスの政治において、抗議やデモ活動は当たり前のもので、重要な伝統の一部でもある。しかし今年に入り、怒りをあらわにする集まりが増えてきたと、BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は指摘する。
議事堂の前やポートカリス・ハウス前の随所に、小さなグループが集まり、プラカードやカメラを掲げ、通りかかる政治家を監視しているという。
BBCモニタリングのシャヤン・サルダリザデフ記者は、7日の抗議は、カナダの首都オタワで行われている「フリーダム・コンヴォイ(自由の車列)」と呼ばれる抗議活動に似ていると分析。
この抗議行動は、カナダ政府がアメリカとの国境を越えて行き来するトラック運転手に、新型ウイルスワクチンの接種を義務付けたことから始まった。参加者たちは、トラック運転手だけでなく全ての人についてワクチン接種義務化を取り消すよう、要求の範囲を拡大している。
イギリスでの抗議活動はオタワに比べて小規模だが、パンデミック中に反ワクチン運動で注目を集めていた人物が多く参加しているという。
また、スターマー党首を取り囲んだ人々からは、「マグナ・カルタ(大憲章)を無視している」という抗議も上がっていた。
これは、「ソヴリン・シチズン(主権市民)」と呼ばれる運動でよく聞かれるフレーズだ。
1215年に制定された大憲章は、現在でもイギリスの法体系の一部。ソヴリン・シチズン運動は、大憲章の条項を発動することで、新型ウイルス対策の法律などを無効にできると主張。偽造書類を使ってワクチン接種を阻止したり、存在しない法律を根拠に、新型ウイルス患者を集中治療室(ICU)から退去させようとしているという。