タイの反政府・王室改革デモ、活動家9人を一斉逮捕

タイ警察はこのほど、反政府デモに参加していた活動家9人を一斉逮捕した。この中には、王室改革を訴えるため首都バンコクで「ハリー・ポッター」シリーズを題材にした抗議活動を行っていた、弁護士のアノン・ナンパ氏(36)も含まれている。

タイでは王室に対する不敬罪が厳しく、これまで長いこと批判を免れていた。しかしここ数週間、学生や活動家らが改革を求めるデモを行っている。

アノン氏は今月初め、王室に対する抗議というタブーを初めて破った。

逮捕されたのは活動家のほか、著名なラッパーなど。治安妨害の容疑に問われており、有罪となれば最長で7年の禁錮刑が科せられる可能性もある。

逮捕された9人はいずれも保釈されているが、近い将来逮捕される可能性のある20人のリストを見せられたと話している。

抗議参加者は、プラユット・チャンオチャ首相の退陣を求めている。チャンオチャ首相は元陸具運司令官で、2014年の軍事クーデターで実権を掌握。昨年の総選挙であらためて民政の首相となった。

「立憲君主制の打倒ではなく改革を」

反政府デモは今月初め、王政改革を要求に盛り込み始めたことで、かつてない方向へと進んだ。

タイ国民は王室を尊敬し、敬い、愛するよう教育を受けるが、同時に王室について発言して処罰されるのを恐れている。不敬罪は最大15年の禁錮刑となる。

国王ラーマ10世(ワチラロンコン国王)が、不敬罪の広範囲な適用を望まないと話したことから、近年ではこの法律の適用は減っている。しかし、政府は治安妨害などを適用することで反対派を標的にしているとの指摘もある。

アノン氏は19日、治安妨害の疑いで逮捕された。今月に入って2回目の逮捕だという。7月にも、別の活動家と共に抗議活動中に逮捕された。

今回の逮捕は、8月3日に行ったハリー・ポッターを題材にした抗議をめぐってのもの。この抗議でアノン氏は、立憲君主制の打倒ではなく改革を望んでいると強調した。

アノン氏は特に、王室財産管理局が持つばく大な資産について指摘している。王室財産管理局は前国王ラーマ9世(プミポン国王)の時代には理論上、タイ国民のための基金だとされていたが、現在は国王個人の財産と宣言されている。このため、ラーマ10世はタイで最も裕福な人物となった。

さらにアノン氏は、ラーマ10世がバンコクに駐在する全軍隊の指揮権を持つと宣言したことについても、民主的な立憲君主制にそぐわないと疑問を投げかけている。

「説明責任を果たしてもらわなければならなかった」とアノン氏は話している。

「私自身の誠意のため、私の話を聞きに集まった人の誠意のため、そして王室への敬意を持って、率直に声を上げることを選んだ。おおっぴらに話さなければ、絶対に理解できないことなので」

「民主派活動家への抑圧」

王室について公の場で議論することのないタイで、アノン氏の発言は大きな驚きを持って受け止められた。タイでは近年、王室を非難した後に近隣国へと逃れた活動家が次々と誘拐・殺害されている。

国内での学生の抗議活動は現在、6年前のクーデター以来の規模になっているが、警察がその鎮圧に追われている。

抗議参加者は、軍部の後ろ盾を得ている現政権の辞任を求めているほか、反対派への嫌がらせをやめること、新たな憲法の制定と総選挙の実施を掲げている。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア担当、ブラッド・アダムス氏は、「タイ政府は反対派の意見を聞くと繰り返し約束しているが、民主派活動家への抑圧が続いていることから、全く無意味な約束だったことが分かった」と指摘。当局に対し、全ての活動家の起訴を取り下げて釈放するよう求めている。

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルのミン・ユ・ハ氏も、タイ当局が「平和的な政府批判を妨害するために法律を使っている」と非難した。

「当局は平和的な抗議参加者への偽の起訴を取り下げるべきだ」

「自分たちへの批判に政府が賛成しないとしても、表現の自由、そして平和的な集会の自由は人権だ」