インドと中国、外相が互いに抗議 係争地での衝突めぐり

インドと中国が国境を争うヒマラヤ山脈地帯で衝突し、インド兵が少なくとも20人死亡したことを受け、両国の外相が17日電話会談し、互いに抗議を表明した。

インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、同国領土に中国が建造物を作ろうとしたと主張。一方、中国の王毅外相はインド部隊が最初に攻撃したと訴えた。

ただ、両外相とも事態を悪化させないことを約束した。

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北部ラダック地方で15日に発生した衝突では、兵士らはこん棒などで戦い、銃撃戦にはならなかったとされる。

係争地で両国が衝突し死者が出たのは、過去45年以上で初めて。

中国は死傷者を明らかにしていない。インドのメディアは、中国兵の死者は40人以上だとの未確認情報を伝えている。

インドのナレンドラ・モディ首相は17日、テレビ演説で衝突について初めて言及。国民の死を「無駄にはしない」と述べた。

また、インドは「兵士が中国軍と戦って死んだことを誇りに思う」とし、「インドは平和を望んでいるが、挑発されればどんな状況にあろうと、相応の仕返しが可能だ」と話した。

両外相は何を話した?

電話会談後、インド政府は声明を発表。戦略上の要衝であるガルワン渓谷で、事実上の国境である実効支配線(LAC)のインド側に、中国軍が建造物を建てようとしたとした。

また、そうした行動は「周到に計画されたものであり、暴力と犠牲者を生む直接の原因となった」とし、中国に「間違いを正す」よう求めた。

一方、中国政府の声明で王氏は、「中国は改めてインドに強い抗議を表明するとともに、インドに詳細な調査と(中略)同じことが起こらないために挑発的な行動の中止を要求する」と述べた。

さらに、「双方は話し合いによって問題を解決し、国境を安全で安定した場所にすべきだ」と付け加えた。

取っ組み合いの戦闘

衝突は、急峻(きゅうしゅん)で岩が多いガルワン渓谷で起きた。

インドのメディアは、両軍兵士は取っ組み合いを繰り広げ、「殴打されて死んだ」人もいたとした。川に落ちたり落とされたりした兵士もいたと報じた新聞もあった。

インド陸軍は当初、インド軍の将校1人を含む3人が死亡したと発表した。その後、インド部隊の17人が死亡し、「戦闘での死者は合計20人」になったとした。

匿名のインド軍高官はBBCに、衝突時はインド兵55人に対し、中国兵は300人ほどいたと説明。「我々は有刺鉄線を巻きつけた金属の棒で頭を殴打された」と述べた。

この衝突により、インドでは中国国旗を燃やすなどの抗議行動が起きている。

一方、中国が死傷者を明らかにしてないことについて、政府は国内で国粋主義的な雰囲気が高まることを嫌っている可能性があると、BBCのロビン・ブラント記者が北京から伝えている。

あいまいな国境

実効支配線の境界はあいまいだ。川や湖、山頂付近の雪などが、境界の確定を難しくしている。世界最大規模の中国、インド両軍は、至る所で遭遇している。

1975年にはインド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州の国境付近で銃撃戦があり、インド兵4人が死亡した。

以来、両軍による発砲は起きていない。

両国は過去30年間で何度か協議を重ねてきたが、国境問題は未解決のままだ。

高まっていた緊張

ここ数週間は、国境付近で双方の緊張が高まっていた。

インドは、中国がガルワン渓谷に数千人の部隊を送り込み、インドの領土を3万8000平方キロにわたって占拠していると主張している。

5月には、北東部シッキム州の国境付近で両軍部隊の衝突があった。同州では2017年にも、中国が国境を広げようとしたことをきっかけに衝突が発生した。

一方インドも、ラダックの実効支配線に沿った遠隔地に新たな道路を建設している。有事の際に部隊や物資の素早い移送を可能にするもので、こうしたインフラ整備に中国は強く反発している。

これまで両国が戦争状態となったのは1962年のみ。この時はインドが屈辱的な敗北を喫した。