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ガザで停戦発効、イスラエル軍がガザの一部から撤退
イスラエルとパレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスの停戦合意が10日朝に発効したことを受け、イスラエル軍はガザの一部地域から部隊を部分的に撤退させたと発表した。この停戦は、ドナルド・トランプ米大統領が示した停戦および人質返還案の第1段階を、イスラエル政府が9日に承認したことで発効した。次の段階については現在も交渉が続いている。
停戦発効に基づき、イスラエル軍は地区内の合意地点まで後退したと述べたが、部隊は依然としてガザ地区の半分を占拠している。
イスラエル国防軍(IDF)はソーシャルメディア上の声明で、「12時からIDF部隊は、更新された展開ラインに沿った配備を開始した」と発表。「南方司令部のIDF部隊は現地に展開しており、差し迫った脅威の排除を継続する」とも述べた。
アメリカのスティーヴ・ウィトコフ大統領特使は、米中央軍がIDF部隊による「第1段階の撤退完了」を確認したとして、「人質解放への72時間が始まった」と述べた。
ウィトコフ特使は、IDFが「イエローライン」まで撤退したと表明。このラインは、ホワイトハウスが先週公開した地図で示したもの。IDFは停戦のこの時点でここまで後退するが、ガザ地区の53%を占拠し続ける。
現地の目撃者によると、IDF部隊はガザ市北西部の郊外から東側へ後退したという。南部では、イスラエル軍がハンユニス地域からも一部撤退したと伝えられている。
アメリカ当局筋によると、中東に駐留している米軍兵最大200人が、ガザでの停戦監視のためイスラエルに移動する予定。
AFP通信によると、ハマスが運営するガザ民間防衛隊のマフムード・バサル報道官は10日午後、「本日、約20万人がガザ北部に戻った」と発表した。
それに先立ち、10日の早い時間には、停戦の発効時刻をめぐって混乱も見られた。目撃者はBBCに対し、10日早朝までガザで空爆が続いていたと話した。ハマスが運営するガザ地区の保健省は、過去24時間で17人が殺害したと発表した。
IDFが撤退したガザ市の地域では、ハマスの治安部隊が街頭に展開していた。通常の警察ではなく、ハマス治安機関のロゴが入った帽子を着用している姿が、カメラに捉えられた。
ガザの民間防衛隊は、破壊された建物の下から遺体を回収している。支援団体は食料、燃料、清潔な水などの必需品が依然として極度に不足していると警告している。
人質と収監者は
合意に基づき、ハマスは現地時間13日正午(日本時間同日午後6時)までに、存命と思われる20人を含むすべてのイスラエル人質と、最大28人の遺体を引き渡す必要がある。
イスラエルもまた、終身刑でイスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人約250人を釈放することになっている。イスラエル軍ラジオによると、そのうち100人はヨルダン川西岸地区で、5人は東エルサレムで釈放される。さらに、国外追放される見通しの人たちもいるという。ガザ地区で拘束され、イスラエル国内で収監されているパレスチナ人1700人も、釈放される見通し。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はテレビ演説で、人質全員を取り戻すという約束を「果たしている」と述べた。首相はまた、イスラエル軍が「あらゆる方向からハマスを包囲している」として、停戦計画の次の段階では「ハマスが武装解除され、ガザが非武装化される」と語った。
ハマスは現時点で、武装解除の約束はしていない。
ハマスは10日、ガザにおいて一切の「外国の後見」を拒否すると述べ、ガザの統治は純粋にパレスチナ内部の問題だと主張した。
ハマスはまた、ガザが「復興、再建、開発支援の分野でアラブおよび国際的な参加」を受けられるよう期待していると表明した。
トランプ氏による20項目の和平案は、ハマスが今後ガザの統治に関与せず、パレスチナ人テクノクラート(技術官僚)による暫定的な移行統治機構がガザを管理し、「平和評議会」が監督することを条件としている。
評議会ではトランプ氏が議長を務め、トニー・ブレア元英首相も参加する。和平案は、ガザの統治は最終的にはパレスチナ自治政府(PA)が引き継ぐとしている。
援助物資は
和平案には、援助物資を積んだトラックがガザ地区へ無制限で入り、ガザ住民に不可欠な援助を届けることが条件として含まれる。住民の多くは、2年間にわたる戦争で繰り返し移動を強いられてきた。10日からは毎日約600台の援助トラックがガザに入る予定だが、詳細は不明。停戦発効以降に、援助物資が住民に届いたかどうかはまだ確認されていない。
国連が支援する総合的食料安全保障レベル分類(IPC)は8月、ガザの一部地域で飢饉(ききん)が発生したと宣言。50万人以上が「飢餓、困窮、死」によって特徴づけられる「壊滅的な」状況に直面していると述べた。対するイスラエルは、領内で飢餓が起きているという指摘を繰り返し否定している。
海沿いを歩いて戻る先には
現地の映像には、イスラエル軍に激しく爆撃され続けたガザ北部へ向かうパレスチナ人が、沿岸道路で長蛇の列をなす様子が映っている。多くの人が残る所持品を背負い、20キロ以上の距離を徒歩で移動していた。
損傷した狭い道沿いでは、パレスチナの旗を振ったり、勝利のVサインを見せる人々もいたが、多くは衰弱し、栄養不良の様子だった。
その多くはガザ市を目指していた。ガザ市は大部分が破壊され、がれきと化している。
インターネット上で拡散されている映像には、ガザ市北部のシェイク・ラドワン、南部および東部のサブラやザイトゥーンといった主要地区が破壊されている様子が映っている。集合住宅が丸ごと崩壊している様子も確認できる。
妻と6人の子どもと一緒にガザ市から南部ハンユニスへ逃れた教師のアラー・サーレ氏は、「道のりは長く厳しくて、食べ物も水もない」とBBCに話した。
「家族を残して、北へ歩き始めた。周りで何千人もの人が苦しんでいる。車を借りるには約4000シェケル(約19万円)かかり、ほとんどの人には到底払えない」
ジャバリヤの自宅へ戻ろうとしていたワエル・アル・ナジャル氏は、息子と一緒に冷たい舗装道路の上で夜を過ごし、いつ帰路に着けるか機会をうかがっていたのだと、BBCが契約するフリーランス記者に説明した。
「たとえ家が破壊されていても、がれきだけでも、戻ってテントを張り、家族のもとへ帰る」と、アル・ナジャル氏は話した。
イスラエルでは家族歓喜
イスラエルでは、人質たちの家族が停戦の知らせに歓喜した。2023年10月7日から、いとこの遺体返還を求めて活動してきたウリ・ゴレン氏は、「停戦合意の知らせを聞いて、大きな安堵のため息をついた」と話した。ゴレン氏のいとこ、タル・ハイミ氏はハマスによる2年前の奇襲攻撃で殺害され、遺体がハマスに連れ去られたと考えられている。
ハマスは、死亡した人質全員の遺体がどこにあるか把握していないと認めている。
そのため、ゴレン氏は「48人全員が帰還するまで、これは終わりではない」と強調した。
イスラエルによるガザへの戦争は、2023年10月7日にハマスが主導したイスラエル南部への攻撃への反撃として始まった。この攻撃では約1200人が殺害され、ハマスの251人が人質となった。
ハマスが運営する保健省によると、それ以降に6万7000人以上のパレスチナ人が殺害された。その中には1万8000人以上の子どもが含まれている。
国連調査委員会および主要な専門家らは、イスラエルが戦争中にガザのパレスチナ人に対してジェノサイド(集団虐殺)を行ったと認定している。イスラエルはこの報告を全面的に否定し、「歪曲され、虚偽だ」と非難している。
(取材:リース・ドゥセット、ラシュディ・アブアルーフ、アリス・カディー、アリス・デイヴィス)