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下院議員の倫理規定で揺れる英政界 審査ルール改正を議論へ
ボリス・ジョンソン英首相に近い与党・保守党の下院議員が議員としての行動基準に触れたと指摘された問題をめぐり、ジョンソン政権の対応が二転三転したことから、政府に対して「腐敗」の非難が英政界で相次いでいる。こうした中、議員の倫理規定と審査制度を刷新すべきか、下院は8日に緊急審議であらためて議論することになった。
「コップの中の嵐」?
イギリス政界で今月初め、倫理規定違反を指摘された与党・保守党の下院議員の処遇をめぐり、政府対応が二転三転する騒ぎがあった。
ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)などについてジョンソン首相の盟友だったオーウェン・パターソン下院議員について、関連企業に便宜供与したロビー活動が議会規則違反にあたると議会基準委員会が報告。30日間の議員資格停止処分を勧告した。
すると政府と与党は今月3日、議員行動を審査する同委員会の手順が不公平だとして、手順そのものの見直しを議決した。
しかし、政権に近い議員を身びいきしてルールを変えるのかと与党内からも強い反発が起こり、ジョンソン政権は急きょ方針を転換。パターソン氏は4日、議員辞職に至った。
かねてジョンソン氏に批判的な保守党のジョン・メイジャー元首相は、BBC番組でジョンソン政権が「腐敗」していると厳しく批判した。
ジョンソン政権の方針転換後に英紙オブザーヴァーが実施した世論調査では、保守党の支持率は前週から3ポイント下がった。ジョンソン首相の支持率は30%で、「支持しない」が「支持する」を20ポイント上回った(前週は16ポイント)。
一方、政府のジョージ・ユースティス環境相は、パターソン氏が議員としてロビー活動規則に違反したかどうか、新しい委員会を立ち上げて検討しようとしたのは、政府の「間違い」だったと認めながら、「これはまさにウェストミンスター(英政界)ならではの、コップの中の嵐だ」とも述べた。
議員行動の審査手続きを変更すると決めた下院議決は、パターソン氏を守るためのものではなく、異議申し立ての権利をすべての下院議員に保証するためのものだったと、環境相は説明した。
野党提案であらためて議論
こうした中、野党・自由民主党が提出した議案で、下院は8日にあらためて、議員行動の審査基準や手順についてどのような改革が必要か最大3時間にわたり議論する。同党は第三者機関による独立調査が必要だとして、規則に違反した議員への罰則強化を求めている。
自由民主党のウェンディー・チェンバレン幹事長は、「議会の汚職禁止ルールをなくしたい思惑がある人たちに、そのような権限を絶対に与えないようにしなくてはならない」と述べた。
「政府の閣僚はこれまでも繰り返し、汚職の指摘をきちんと調べようとせず、汚職にあたる会合や寄付を申告せず、自分の身を守るために国の制度に細工しようとしてきた」とチェンバレン幹事長は批判した。
野党党首、首相の謝罪求める
最大野党・労働党の党首サー・キア・スターマーはジョンソン政権の「腐敗」を厳しく糾弾。ジョンソン首相に対し、今回の不手際について下院審議の場で国民に謝罪するよう求めた。
スターマー党首は7日、BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」で、ジョンソン首相がパターソン氏を「守ろう」として「腐敗した、見下げた」ふるまいをしたと強く非難した。
スターマー氏は後にさらに、首相は8日の下院審議に「出席し、自分の過ちについて説明し、国に謝罪し、自分が(議会の威信を傷つけるなど)引き起こした問題の是正に取り組むべきだ」とコメントした。
その上でスターマー氏は、パターソン氏をはじめ、倫理規定違反で議員資格停止処分を受けた下院議員には、上院(貴族院)議員となるための一代貴族の称号を与えるようなことはしないと、あらためて明確にするべきだと述べた。
辞職した議員は何を
1997年から英中部・北シュロップシャー選挙区から保守党議員として下院入りしていたパターソン氏は、自分の処分に対する政府の二転三転後、4日に議員辞職を発表。「政治という非常な世界の外」で公僕として仕え続けるとコメントした。処分に値する問題行動があったとは、一切認めていない。
パターソン氏は2015年に臨床検査技術企業ランドックスと顧問契約を結び、2016年には精肉業者リンズ・カントリー・フーズと同様に契約した。これによって議員報酬のほかに年間10万ドルの顧問料を得ていた。
イギリスの下院議員はこうした顧問契約を結ぶことは認められている。ただし、報酬を得ている企業や団体のため、議員としての影響力を利用して、利益誘導や便宜供与をしてはならないことになっている。
議員の行動を審査する議会の第三者機関、基準委員会は、議員が特定企業などに対して「有償の支援活動」を行ってはならないとするこの決まりにパターソン氏が違反したと結論した。具体的には、次の行動が問題視された。
- ランドックス社に関して、牛乳に含まれる抗生物質の検査について英食品基準庁に3回にわたり接触した
- リンズ・カントリー・フーズ社に関連して、英食品基準庁に7回にわたり接触した
- ランドックス社と血液検査技術に関連して、英国際開発省の幹部に4回にわたり接触した
基準委員会はこのほか、パターソン氏による規則違反を次のように報告した。
- 食品基準庁へのメール4通で、自分がリンズ・カントリー・フーズ社から報酬を受けている同社の顧問だと開示しなかった
- 顧問企業などクライアントの打ち合わせ16回を、議会内の事務室で行った
- ビジネス関連の手紙2通を、下院の紋章などが印刷されている公式便せんを使って送った